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2020.03.23

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約10年かけて生まれた
広島ブランドの酒米「千本錦」の酒は
「全国新酒鑑評会」で連続金賞受賞中
広島“酒”コラム 第二回

酒の味を決める大きな要素の1つが原料となる「酒米」。広島県で誕生したオリジナルの酒米「千本錦」を使った日本酒がここ数年、全国でも注目を集める存在になっている。千本錦の酒がなぜ美味しいのか、その秘密を探るべく、広島県立総合技術研究所食品工業技術センター 生物利用研究部長の大土井律之さんに話を伺った。

酒米の品質が日本酒の味を左右する

日本酒の命と言われる米。酒の味を大きく左右し、美味しい酒を造るために欠かせないのが、良い酒米(酒造好適米)の存在だ。食べて美味しい米が、良い酒を醸すとは限らない。
大吟醸酒の酒米の代表格といえば、主に兵庫県で栽培される山田錦。圧倒的な高い評価を得ているが、どうしても産地が限られてしまう。そのため各地の農業試験場が中心となって、地元産で山田錦を超える品質の米を、いくつも開発するようになった。広島県の「千本錦」もその1つだ。

良い酒造好適米は大粒で心白が大きい

そもそも良い酒米とは、どのような米なのか。
日本酒造りを目的に作られた酒造好適米は食用米に比べて大粒で、雑味の元になるたんぱく質や脂質が少ない。そして米粒の中心の「心白」と呼ばれる白色不透明部分があることが求められる。心白はデンプン粒が粗く隙間が多いので、麹造りの際に菌糸が入り込みやすく、繁殖もしやすい。また吸水性も高いため、良い蒸し米が作りやすいなど、酒造りに有益に働くのだ。

約10年かけて生まれた広島ブランド

広島県の酒造メーカーの多くで大吟醸酒や吟醸酒などの製造に力を入れるようになると、「山田錦のような特性を持ちながらも、広島で栽培しやすいオリジナル品種の酒米を開発してはどうか」という声が高まった。そこで、1990年に農業技術センターが、酒米の最高峰である山田錦を父、広島の気候に適した中生新千本を母として交配した。選抜や絞り込みを繰り返し、広島県酒造組合連合会の協力を得て試験醸造を実施するなど、10年近い歳月をかけて、1999年に誕生したのが「千本錦」だ。玄米は大粒で、心白の形状も山田錦に似ており、高度な精白ができる。できあがる酒も山田錦と比較しても遜色なく、吟醸酒の香り高く、ふくよかで丸みのある味に仕上がる。
誕生翌年の2000年から本格的に栽培されるようになった千本錦は、草丈が高く倒れやすい山田錦に比べ、丈が10センチ程度低く、1週間ほど早く収穫できる。こういった育てやすさも、栽培農家に歓迎された。

鑑評会でも毎年のように金賞受賞

全国の大吟醸酒の出来栄えを競う「全国新酒鑑評会」では、千本錦を使った酒は、少なくとも2011年から2019年まで9年連続の金賞受賞となっている。
千本錦が生まれたことで、山田錦の高い酒造適性を継承しつつ、広島の生育環境に合った米を生産できるようになった。良い酒造好適米が豊富にある広島には、淡麗なものから芳醇なものまで、個性豊かな酒が揃っている。
さらに2021年には、純米酒を製造するための酒米が10年がかりで開発される予定だそうで、広島の酒がさらに美味しくなる予感がする。

広島県立総合技術研究所食品工業技術センター
生物利用研究部長大土井律之さん。

参考文献
広島県立農業技術センター研究報告「大吟醸酒用酒造好適米新品種‘千本錦’の育成」

TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま

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※写真はすべてイメージです。

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