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2020.03.31

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  • treasure

広島の蔵として、広島の酒米を使って
“広島のお酒”を作ってみたかった――
明治創業の「金光酒造」、5代目の挑戦
広島“酒”コラム 第五回

広島の土地で栽培しやすい酒米として開発された「千本錦」。その千本錦を使用して評価の高い大吟醸酒を作っている酒蔵のひとつが東広島市黒瀬町の「金光酒造」だ。明治創業の老舗が、どういういきさつで千本錦に出会い、それを採用するに至ったのか。その裏側には蔵の5代目となる金光秀起(かねみつ・ひでき)さんの酒づくりに対する情熱と反骨精神が息づいていた。

苦境に陥った老舗の高品質路線への挑戦

金光酒造が酒づくりをはじめたのは1880(明治13)年。2020年でちょうど創業140周年になる。広島の酒どころといえば西条が有名だが、金光酒造は同じ東広島市内でも西条から10キロ以上離れた黒瀬という地域にある。

1880年創業の「金光酒造」は、東広島市南部の黒瀬町にある。

5代目となる秀起さんが蔵に入った90年代後半、会社の経営は危機的状況を迎えていた。酒づくりの機械化を推し進め、安価なパック酒を主力商品にしたが、林立する「酒のディスカウントショップ」によって価格競争に巻き込まれ売り上げは下がる一方だった。
そんな状況で秀起さんは一念発起し、高品質路線に舵を切ることを決意する。自分が美味しいと思える酒を作り、それを適正な価格で販売する。「蒸し」と呼ばれる昔ながらの工程を復活させ、若い従業員を雇い人材育成もはじめるなど、酒づくりの本分に回帰することで傾きかけた老舗の屋台骨を建て直そうとした。

5代目金光秀起さん。

主力ブランド「賀茂金秀」はこの名前から一文字ずつとって命名された。

広島の蔵として広島の酒米を使いたい

そんな中で出会ったのが、広島オリジナルの酒米として誕生したばかりの「千本錦」だった。千本錦に目を付けたのには理由がある。酒蔵復興のため秀起さんは「全国新酒鑑評会」で金賞を獲るという目標を立てるが、その金賞を獲るには酒米の最高峰と呼ばれる山田錦を使用することが一番の近道だと言われていた。
しかし秀起さんは定石通り山田錦を使うことにどうしても納得がいかなかった。
「山田錦は端正で、酒米として優等生。ポテンシャルが高いのは認めます。だけど私は広島の蔵として、広島の酒米を使って“ザ・広島”のお酒を作ってみたかったんです」

広島の酒蔵としてのこだわりが「千本錦」の使用に結びついた。

洗米された直後の酒米。水はすべて鉄分の少ない井戸水を使っている。

安酒の代名詞だった「桜吹雪」で勝負

千本錦は山田錦を母体に作られた品種なので基本的に性質は似ているが、当然異なる魅力もある。千本錦は山田錦より若干硬質で、酒づくりに必要な「心白」の量も少ない。それが酒になると丸みのある独特な甘さを生む。
開発をはじめて7年、ついに千本錦を使用した「桜吹雪 大吟醸」は全国新酒鑑評会で金賞を受賞した。ちなみに桜吹雪は創業当時からある金光酒造の定番銘柄で、酒蔵の低迷期は安酒の代名詞になっていた。
「ずっと低評価だった“あの”桜吹雪が金賞を獲ったということが重要なんです。相当頑固で偏屈な考え方だと思いますけどね(苦笑)」
蔵のシンボルであり、安酒のイメージの定着した桜吹雪であえて勝負をかける反骨精神。現在、桜吹雪の大吟醸は初めて金賞を受賞した2008(平成20)年以降、10年間で8回金賞を受賞するなどすっかり名酒としての風格を漂わせている。

金光酒造の創業当時からのメインブランド「桜吹雪」。

海外でも評価が高い「賀茂金秀」

その「桜吹雪 大吟醸」は大吟醸らしい華やかな香りが特徴である。黒瀬の水の個性であるミネラル感を活かし、口当たりの優しさと、深い余韻を実現した。「牡蠣やミル貝といった貝類と一緒にワイングラスで飲んだりしてもいいでしょうね」。
一方、金光酒造には秀起さんが立ち上げた新銘柄「賀茂金秀」があり、その純米大吟醸も千本錦を使用している。こちらは2018(平成30)年、フランスで行われた日本酒品評会「KURA MASTER」でプラチナ賞を受賞するなど、海外での評判が高い。フレッシュでジューシーというコンセプトで作られ、口に含むと口内をチカチカと刺激する細かいガスが楽しめる。これは発酵で出るガスが抜けきらないうち素早く瓶詰している証拠で、淡麗な味わいに小気味いいアクセントを与えている。「これは人が少し手を加えたものが相性いいと思うんです。酸味も合うので、トマトを煮込んだラタトゥユとか」。

千本錦が使われた 「桜吹雪 大吟醸」と 「賀茂金秀 純米大吟醸」。

千本錦が使われた「桜吹雪 大吟醸」と「賀茂金秀 純米大吟醸」。

あくまで瀬戸内にこだわりたい

「今は流通が発達しているので、広島にいながら東北の酒米を使うこともできるけど、うちが使っているのは広島、岡山、兵庫産がほとんど。あくまで瀬戸内というものにこだわりたいんです。その中でも広島の高品質米である千本錦を高価格帯のお酒に使うことで、今後も金光酒造は広島の蔵であることを表現していきたいです」。
 秀起さんが蔵に入って22年。「いいもの、美味しいものを作りたい」という信念だけで進めてできた老舗蔵本の改革は、千本錦という頼もしい味方を得て、さらなる飛躍を遂げようとしている。

金光酒造の商品は蔵の正面にある蔵元販売所「さくら館」で直接購入することができる。

TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま

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※写真はすべてイメージです。

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