せとうちパレット

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2020.08.31

  • sake

JR可部駅下車、
古い町並みと酒蔵めぐり
広島“酒”コラム 第十一回

現在も趣のある日本家屋が点在する可部街道。江戸時代から大正時代にかけて栄え、全盛期は造り酒屋が8軒あったそうです。2020年、現存するのは「久保田酒造」と「旭鳳酒造」のみ。今回はそのうちの1軒、「旭鳳酒造」を訪ねました。7代目蔵元で杜氏としても活躍する濵村洋平さんに、酒造りについてお話しをお伺いします。

風情たっぷりな街並みを散策

可部街道は江戸時代に広島城と山陰地方を結ぶ石見浜田往還と雲石往還の分岐点で太田川にも面していることから、海運も盛んで、物資流通の重要な場所として街は栄えました。可部駅で下車して可部街道を歩いてみると、その名残を感じさせる立派な日本家屋が点在しています。駅東口から歩いてすぐに、菱正宗の銘柄でおなじみ「久保田酒造」の趣ある建物、さらに街並みを散策しながら歩くこと15分で「旭鳳酒造」に到着します。

創業1868年の久保田酒造

可部街道沿いに現存する2つの酒蔵

広島の酒どころといえば西条が有名ですが、可部街道沿いにも全盛期には酒蔵が8軒あったといいます。現在は「旭鳳酒造」と「久保田酒造」の2軒となりました。どちらも歴史ある酒蔵で、現在も可部街道で酒造りを続けています。なかでも「旭鳳酒造」は、7代目・濵村洋平さんが若くして蔵元に就任され、翌年からは杜氏も兼務している全国的にも珍しい酒蔵です。

7代目蔵元兼杜氏の濵村洋平さん。
1989年生まれ。大学卒業後、家業の「旭鳳酒造」に入社。2015年に7代目を継ぎ、翌年から杜氏を兼務。

可部の地下水が美味しい理由

「旭鳳酒造」では、酒造りの重要な要素である水は、街をぐるりと囲む山と川からダイレクトに恩恵を受けた可部の地下水を使用しています。「可部の地下水は軟水ですが、軟水の中でも硬水に近いです。硬水は、酒造りに適しているので発酵がしっかり進みながら軟らかく仕上がる。軟らかさが酒の味わいに出るので、口に含んだ時にトゲがない口当たりのいい酒になります。可部の美味しい水と広島県内産の米で「旭鳳酒造」らしい酒造りを目指しています」

「旭鳳酒造」の酒造りへの思い

「旭鳳酒造」の歴史は古く、創業は江戸時代後期の1865年、2020年で155周年になります。洋平さんが蔵に入ったのは9年前、22歳の時。先代のお父様は料理人やアパレルショップを経営した自身の経験からか、「自分がやりたい仕事をしなさい」と洋平さんによく言っていたそうです。洋平さんは20歳を過ぎて酒を嗜むようになると、自然と日本酒に興味が湧き、「旭鳳酒造」へ入社を決意。「生まれ育った場所でもあるので、無くなるのは寂しくて」ともおっしゃっていました。
代々、外部から杜氏に来てもらっていた「旭鳳酒造」ですが、2016年からは洋平さんが杜氏を兼務しています。きっかけは先代のお父様への思い。「父の葬儀の日、『親父のために一本造りたい』という思いが突然込み上げてきました。今まで酒を作った経験はなかったのですが、当時の杜氏や、父と親しくしていただいた広島の酒蔵の先輩方に教えていただき、助けていただきながら必死で造りました」

先代と写った幼い頃の1枚。イベントで客との触れ合いを楽しむのは先代譲り?

その思いから誕生したのが純米吟醸「泰平」。お父様が開発に携わった「KB酵母」を使った渾身の1本となったそうです。「出来上がった「泰平」を持って営業に回った時、自分で造った酒なので1から10まで思いを込めて説明することができました。全ての商品に対して、こんな風に気持ちを注ぎたいと思い杜氏に就任する決意をしました」

写真の真ん中が、純米吟醸「泰平」。酒の原料はこしひかり、八反錦など5〜6種類を使い、精米歩合を変えて約20種類の酒を造っているそうです。

洋平さんが造る酒はこの秋で5期目

「杜氏を務めるようになってからはまず最初に『旭鳳の味』の軸を作りました。そこへ向かってしっかり逆算してゴールへ。酒には気持ちが宿ると考えています。ふわっとゴールを決めずに悩みながら作ってしまうと面白いことに、ふわっとした中途半端な酒になります。だからゴールを決めて走り出すことにしています。原料と水と酵母の持つ力に任せて、造り手が手を加えすぎることはせず、軌道修正してあげるくらいの気持ちで携わっていく。酵母は生き物なので『どれだけ酵母が力を発揮できる環境を整えられるか』が大切。と、杜氏になって3期目で気がつきました。」「その年の天候で原料となる米の味は変わるので、同じように酒の味も変化します。ワインのような感覚でその年の日本酒を楽しんでもらいたいです」ともおっしゃっていました。どんな酒ができるのか今期も期待が高まります。

「旭鳳 純米大吟醸 八反錦」。香りが穏やかで旨味がしっかり感じられ、酸度が程よく口に残る食中酒。

築150年以上。歴史を感じさせる店内。

気になる酒は試飲してから購入することができます。

旭鳳酒造

安佐北区可部3-8-16
082-812-3344
[営業時間] 8:30〜17:30
[定休日] 日曜・祝日

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「旭鳳酒造」の酒が楽しめるご近所の料理店

JR可部駅東口前にある日本酒に詳しい店主さんが営む料理店「SAKE Bar ゆう」です。店主の岡原友祐さんは、生粋の日本酒好きで美味しい酒を求めて全国の酒蔵を訪ね歩いたこともあるほど。

岡原さんは可部出身。この界隈を盛り上げようと地元にバーを構えました。

日本酒のラインナップは常時50種類。もちろん、ご近所でもある「旭鳳酒造」の濵村洋平さんとも交流があり、旭鳳の酒を飲みたい人たちが集っています。近頃は、日本酒を熟成させて時間軸で楽しむという「熟成酒」も始められています。料理は和食をメインに旬の食材を使った「おまかせ3種盛り」、「おまかせ5種盛り」などを用意。オーダーした日本酒に合う料理を作ってくれます。ランチは予約制で、和食おまかせ弁当やローストビーフ丼などのテイクアウト商品(いずれも要予約)が好評です。

写真左から、バイ貝の旨煮、鶏レバーの低温調理、ちりめん山椒、いぶりがっことクリームチーズの最中、あら炊き。食材は季節によって変更します。

JR可部駅東口から徒歩すぐ。

SAKE Bar ゆう

安佐北区可部2-36-13
082-554-6488
[営業時間] 16:00〜24:00(ランチ、テイクアウトは要予約)
[定休日] 日曜

詳しくはこちら

TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま

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※写真はすべてイメージです。

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