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2020.10.16

  • sake
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広島杜氏のふるさとへ【前編】
安芸津蔵めぐり〜柄酒造〜
広島“酒”コラム 第十四回

広島杜氏のふるさと、吟醸酒発祥の地と呼ばれる東広島市安芸津町。吟醸酒の生みの親・三浦仙三郎ゆかりの地を辿りつつ、軟水醸造法を受け継ぎ手造りの味を追求する酒蔵を2回に分けてご紹介していきます。前編は、創業170年、少量ながら目の行き届いた酒造りを行う蔵元「柄酒造」。瀬戸内海を望む港町の酒造りとは。柄酒造の杜氏に安芸津の酒の魅力について伺いました。

吟醸酒の父・三浦仙三郎、
安芸津三津で日本酒革命!

安芸津の酒造りは江戸時代にまで遡ります。広島藩の米の集積地であった当時、藩の財政のために米を高価値な日本酒に変えて流通させたことから、広島の酒造りは発展していきます。明治になり日本酒は革新期へ。もともと広島は軟水の地で、日本酒作りには不向きとされていましたが、安芸津町の醸造家・三浦仙三郎が「軟水醸造法」を発明。硬水に較べて発酵が進みにくい軟水を逆手に取り、醪をゆっくり発酵させることで甘くふくよかな日本酒造りを可能にしました。これが現代で人気の「吟醸酒」の始まりです。仙三郎の技術を身につけた安芸津の杜氏によって吟醸造りが各地に普及したとされています。

山八幡神社にある三浦仙三郎像。広島酒発展の基礎を築き「吟醸酒の父」とも呼ばれています。

安芸津にある蔵元は「今田酒造」と「柄酒造」の2軒。山八幡神社に酒樽が奉納されています。

映画「恋のしずく」の
ロケ地となった老舗酒蔵

潮風薫る安芸津港から徒歩約6分、昭和レトロな建物が残る街並みを抜けると、重厚感あふれる蔵構えの「柄酒造」が見えてきます。こちらは三浦仙三郎の軟水醸造法を受け継ぎ、今もなお手造りの味を追求する小さな酒蔵。現在、8代目となる杜氏・柄宣行さんがスタッフ1名とともにたった2人で酒造り行っています。また、柄酒造は東広島が舞台となった日本酒映画「恋のしずく」の酒蔵モデルになったことでも有名。実際にロケ地として活用され、スクリーンに映し出された場所では映画の名シーンが蘇ってきます。

創業170年の趣ある外観。「関西一」は地元で愛され続けている清酒銘柄。

「恋のしずく」のロケ現場になった蔵の入口。暖簾の奥では出荷前の日本酒の準備が行われていました。

映画のヒロインが酒造り道具を洗うワンシーン。同じ場所で柄さんが再現。

西日本豪雨で被災…
地元の人の後押しで再スタート

まだ記憶に新しい2018年7月の西日本豪雨。柄酒造も浸水被害に遭い、大きな打撃を受けました。醸造に必要な道具や機械類、そして酒造りの要である麹室がドロ水に飲まれ、壊滅的な状態だったそうです。「被災直後は何も考えられず、酒造りをやめようと思っていました。そんな中、地元の人が積極的に蔵を片付けてくれまして。少しずつ綺麗になっていく蔵を見ていくうちに気持ちが前向きになり、蔵の再興を決意しました」。被災して約3ヶ月後から本格的に動き出し、翌年1月には酒造りを再開。「たくさんの方に支えていただき、流通は厳しいと思っていた新酒をお客様へ届けることができました」と目頭を熱くする柄さん。当時の辛い心境を語ってくださいました。

膝上まで浸水した酒蔵。土壁は剥がれ、水圧によって建物が傾くなど、被害の大きさを物語っています。

水害を避けるため2階に作り変えた杉張りの新しい麹室。製造メーカーの協力もあり2018年の11月には完成。

被災翌日から蔵の片付けをした地元の方々。写真は毎年行っている地域の酒造り体験の風景。被災後も変わらず実施をしているそう。

「大吟醸 於多福(おたふく)」が
広島県清酒品評会で金賞

柄酒造の代表銘柄は「於多福(おたふく)」。大吟醸、純米吟醸、純米と展開しています。中でも大吟醸は、2020年第115回広島県清酒品評会千本錦の部で金賞を受賞。「今回の酒は米も酵母も “オール広島”に拘って造ったものなので、広島県で一番になれたことは本当にうれしかった。香りは少し大人しめですが、味わいの調和が取れた1本に仕上がりました」と自信作となっているようです。また、受賞した大吟醸をはじめ純米吟醸、純米はいずれも食中酒向き。合わせる料理も様々で、大吟醸はタイの刺身、純米吟醸は小イワシの天ぷら、純米はカワハギの煮付けが柄さんお薦めのペアリング。「地域で醸す酒は、自然とその街の味に合うお酒になっていきます。安芸津の空気や魚とともに日本酒を味わうと一味も二味も違います」。

広島産の酒造好適米「千本錦」と広島オリジナル酵母「広島もみじ酵母」を使用した大吟醸の於多福。

左から純米吟醸、純米、大吟醸。港町で発展した酒蔵だけに、瀬戸内海の風景がよく似合う。

寝床に就くまで酒造り。
呑んべぇが作る日常酒

自称 “呑んべぇ”と言うほど大の酒好きの柄さん。「柄酒造は、毎日飲んでも飽きない、喉をスルスルと通る味わいを目指しています。呑んべぇだから造れる日常酒ですね」。品質管理と言って毎晩お酒を嗜む姿に奥様は呆れ顔になることもあるそうです。また、理想の日本酒について伺うと、「昨年よりも良い日本酒です。米も水も麹もその年によって違う。だから酒造りは毎年1年生なんですよ」。謙虚ながらベストな味わいを追求する姿勢に頭が下がります。そして、2020年秋には嬉しい話題も。9代目となる息子さんが蔵に入ることが決まったそうです。次世代へ受け継がれていく柄酒造の酒造り。新酒のようなフレッシュが加わり、磨きのかかった新たな日本酒を心待ちにしたい。

さらりと軽快な飲み口がポイント。フレッシュさを味わいたい方は冷やで。寒さが増していく秋から冬にかけてはぬる燗がお薦め。

8代目蔵元兼杜氏の柄信行さん

安芸津町出身。酒造り歴35年。杜氏はもちろんのこと、社長、事務員、配送係などの業務を全て一人で行っています。

柄酒造

広島県東広島市安芸津町三津4228
0846-45-0009
営業時間/8:00〜17:00
定休⽇/不定休
URL/ https://www.tsukasyuzou.jp

※新型コロナウイルス感染予防対策を徹底し、お客様が安心して来店できる環境を整えています。

TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま

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※写真はすべてイメージです。

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